第52回 脳波について

<第52回> 2021年11月8日 板橋 泉

脳波がどういう検査かご存じでしょうか。よく知らないという方が多いと思います。
「頭に電気を流されるのでしょうか?」「痛い検査でしょうか?」と不安に思って聞いてこられる患者さんもいます。
脳波とは、頭皮に20‐30個の電極を装着し、脳神経細胞の電気活動を記録する検査です。
脳の機能評価やてんかんの診断のために行います。
脳に電気は流しませんし、痛くありません。

前日によく洗髪し、当日はムースやワックス等の整髪剤をつけずにいらしてください。
起きているときだけでなく、できれば眠っているときも記録するのが理想的です。
場合によって睡眠導入剤を使用することもあります。検査直前のお昼寝は避けていただけると助かります。

脳波と聞くと、アルファ波という言葉を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
音楽を聴くなどして、リラックスした気分になると出現するといわれていますよね。
アルファ波とは、一般には安静、覚醒、閉眼時に後頭部優位に出現する背景活動を指します。
この背景活動は、年齢により変化するので、成人だと周波数8‐13Hzのアルファ帯域にあたりますが、乳幼児では4‐7Hzのシータ帯域にあたります。
検査中に開閉眼してもらうのは、この背景活動を記録するためです。
この背景活動は、うとうとと眠くなってくると消失してしまいます。よってしっかり起きている状態で記録するのが重要です。
起きているときの検査では、開閉眼に加えて、光の点滅で刺激したり、深呼吸してもらったりもします。

脳波はCTやMRIといった脳画像と比べると歴史のある検査で、もうすぐ100周年を迎えます。1924年にドイツの精神科医であるハンス・ベルガー先生が、世界で初めてヒトの脳波の記録に成功しました。日本では、1939年に本川弘一先生(後に東北大学総長)が脳波の研究を開始し、その後、我が国で初めてヒトの脳波の記録に成功しました。日本脳波学会を創設し、初代会長になりました。このため、本川先生は日本の脳波学の父と呼ばれ、東北大学は日本の脳波学発祥の地とされています。