第70回 睡眠時無呼吸症候群とCPAP

<第70回> 2023年5月12日 A.M

みなさんの周りの方で、いびきをかいている方はいませんか?また、自分のいびきで目が覚めた経験はありませんか?
私は子供の頃、家族がいびきをかいていても「ちょっとうるさいな」くらいにしか思っていませんでした。しかし、いざいびきがピタッと止まると、「あれ?息が止まっている??」と心配になったことはあります。今思えばそれは【睡眠時無呼吸症候群】だったのかもしれません。
睡眠時無呼吸症候群(Sleep apnea syndrome:SAS)は、睡眠中に無呼吸を繰り返すことで様々な合併症を起こす病気です。SASの患者さんでは高血圧、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が高くなり、特に重症SASでは死亡率が約4倍、心血管系疾患発症の危険性は約5倍にのぼると報告されています。
SASの原因の大半は、空気の通り道である上気道が狭くなることにあります。「いびきをかくのはどんな人のイメージですか?」と聞くと、よく「太っている男性」という回答が返ってきます。たしかに首まわりの脂肪が多いと上気道は狭くなりやすく、肥満はSASと深く関係しています。その他にも扁桃肥大、舌が大きいことや、鼻炎・鼻中隔弯曲などの鼻の病気も原因となります。さらに、あごの後退や、あごが小さいこともSASの原因となり、肥満でなくてもSASになりえます。

タイトルにも書いた「CPAP(シーパップ)」という言葉を聞いたことがありますか?また、下のイラストのようなマスクを装着した状態で寝ている芸能人をテレビで見かけた方ことはありませんか?

持続陽圧呼吸療法(Continuous positive airway pressure:CPAP)とは、SASの治療法の一つで、中等~重症SASの標準的治療法として広く用いられています。CPAPは機械で圧力をかけた空気を持続的に鼻から気道に送り込み、狭くなっている気道を広げ、睡眠中の無呼吸を防止します。

 

重症SASの患者さんにおいて、CPAP治療を行った場合と行わなかった場合とを比較した研究によると、CPAP治療を行った患者さんの方が明らかに長生きできたなど、多くの研究によって、SASに対するCPAPの効果が証明されています。

いびきをかいているだけでSASであるとは限りませんが、「いびきくらい、よくあることだ」と放っておくのは危険かもしれません。寝ているときのことは自分ではよくわからないからこそ、適切な検査を受け、適切な治療をして長生きしたいものですね。

参考:厚生労働省 e-ヘルスネット
   Terry Young et al., Sleep 2008;31(8):1071-1078