<第86回> 2024年9月24日 K.A
読者の皆様、こんにちは。
読者の皆様は、『献血』の文字にどのようなイメージを持ちますか?
今月のコラムは、命のバトン『献血』についてのお話です。
1964年8月21日、日本政府が輸血用血液製剤を献血により確保する体制を閣議決定したことから、毎年8月21日は『献血の日』とされています。当時売血が盛んに行われていた社会的背景があり、安全な輸血用血液製剤を確保するために献血の制度が始まり、現在国内の輸血用血液製剤は全て日本赤十字社の献血によって供給されています。宮城県の献血実績として、令和4年度の献血者数は91,860名、その内の約1/4の輸血用血液製剤は東北大学病院で、病気の治療や手術など輸血が必要な方に提供されています。
輸血用血液製剤には赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤、全血製剤があります。『輸血』の文字をみると、真っ赤な血液のイメージが湧きますが、血漿製剤と血小板製剤は黄色の血液製剤です。現在では患者さんが必要な成分だけを輸血する成分輸血の頻度がが増え、全血製剤は大量出血など全ての血液成分が不足する状態などで使用されるそうです。
全国的に少子高齢化の影響もあり、若年者(10~30代)の献血はこの10年で約30%減少しています。日本赤十字社の2035年を見据えたシミュレーションによると、過不足ない事業展開に向け、献血基礎の構築として学校教育への働きかけが掲げられています。
初回献血者の献血再来率に関与する影響を検討した研究によると、22歳以下の職業が学生に絞った解析で、初回の献血時に、『女性』、『18歳未満』、『体重58kg以上』、『初回の献血200ml全血』が再来に有意に影響を及ぼす因子であり、初回献血時の年齢が上昇するほど再来率が低下する傾向があるという結果でした。学生群において、『女性』が再来に影響を及ぼす因子だったことは意外でしたが、『男性に比べ女性のボランティア意識が高い』という既報の学生の意識調査があり、ボランティア意識の高さが影響した可能性があるという考察でした。
私が献血に行くようになったのは、高校の恩師が献血の普及活動に熱心に取り組まれていたことがきっかけでした。献血後に通知される血液データの変動に興味を持ち、血液に関係する仕事に関心を持ち、臨床検査技師を志しました。なんとなく始めた献血でしたが、職業選択のきっかけとなり、献血が習慣となり、初めての献血から20年の今年、通算100回を達成しました。今後も健康を維持して、命のバトン=献血をつないでいきたいと思います。
コラムの執筆をきっかけに、『どうして私は献血を続けてきたのか』について、自身の行動分析をしてみました。
スポーツなどで観客が選手を応援するのがよい例ですが、人間の脳は主語を認識できないと言われ、誰かを応援すると自分も応援されていると認識するそうです。また人間は生来社会的動物であり、人の役に立つことで幸福を感じるのだそうです。私は献血を通して、懸命に生きようとしている方を応援し、社会とのつながりや自分が社会に必要とされていると思えることで自己肯定感や充足感が得られ、このようなポジティブな感情が献血を続ける原動力になっていると思います。
献血を無理強いするつもりは全くありません。
献血に関する情報のひとつとしてお読みいただけたら、幸いです。
宮城県では一番町の杜の都献血ルームAOBAと仙台駅前の献血ルームアエル20、県内を巡る献血バスで献血ができます。
献血に興味がある方は、献血に行ってみるのはいかがでしょうか。もしかすると誰かの役に立つことで自己肯定感や充足感が得られるかもしれませんし、思いがけない気持ちを抱く自分に気がつくかもしれません。
【おまけ】
夏休みの時間を活用し、リフレッシュのために連日運動をしていました。
体調万全で献血へ行くと、事前検査で白血球数が規定値を超えていたため、献血できませんでした・・・。
調べてみると、運動によって、白血球の数が増えることがあるそうです。
後日運動を控えて献血へ行くと、白血球数は規定範囲内で献血できました。
運動で白血球数がこんなに変動すると知り、体の反応性の高さに驚きました。
改めて血液データの変動のおもしろさと人体の不思議を感じました。
参考
日本赤十字社
https://www.jrc.or.jp/donation/blood/list/
https://www.jrc.or.jp/donation/blood/news/2024/0819_042287.html
宮城県赤十字血液センター ホームページ
https://www.bs.jrc.or.jp/th/miyagi/center/m7_02_01_list.html
初回献血者の再来室にかかる影響の検討 小田嶋ら,Japanese Journal of Cell Therapy,Vol.66.No.5 66(5):671-679,2020