<第89回> 2024年12月17日 I.I
わが国で、年間どのくらいの方が交通事故で亡くなられるか知っていますか?
下の図は、令和5年の厚生労働省の調査による死因の内訳を示しています。

交通事故は第7位の死因である不慮の事故(2.8%)に含まれており、
年間約2500人の方が命を落としています。
交通事故による死亡は10年前から毎年減少していましたが、昨年増加に転じました。
それでは交通事故による死亡において、致命傷となった損傷部位のうち最も多いのはどこでしょう?
下の図は、令和5年の警察庁の調査による交通死亡事故において致命傷となった損傷部位の内訳を示しています。

正解は「頭部」です。
頭部には呼吸中枢を担い、生命維持においてとても重要な脳幹があるためです。
頭部を受傷すると、頭蓋骨骨折、脳挫傷、びまん性軸索損傷、硬膜下血腫、くも膜下出血などにより様々な脳損傷をきたします。
死に至らないまでも、重篤な後遺症により日常生活に支障をきたし、介助を要する状態になることもあります。
頭部外傷により死亡した方のヘルメット着用率を調べてみると、
自動二輪車や原付自転車に乗車中のヘルメット着用率が97%と高いのに対し、
自転車に乗車中のヘルメット着用率は12%しかありませんでした。
この着用率が上がれば、死亡事故の減少が期待できます。
そのため2023年4月1日から道路交通法が改正され、自転車乗車時のヘルメット着用が努力義務になりました。
私事ではありますが、昨年、自転車乗車中に交通事故に遭い救急搬送されました。
幸い大事に至らず済みましたが、道路交通法を意識するきっかけとなりました。
これまで交通事故で搬送された患者さんにたくさん検査を実施してきましたが、
いざ自分が搬送される立場になり、より身近に感じるようになりました。
自分は交通事故なんて遭わないだろうと他人事のように感じるかもしれませんが、
一生のうち4人に1人は交通事故に遭うと言われています。
最後に、1年を通して最も交通事故が発生しやすいのは12月です。
2024年も残りわずかとなりました。
みなさまも事故のないよう気をつけて、楽しい年末年始をお過ごしください。
引用元
厚生労働省:令和5年(2023)人口動態統計(確定数)の概況
警察庁:令和5年中における交通死亡事故の発生状況および道路交通法違反取締り状況等について