第58回 苔(コケ)活してみませんか?

<第58回> 2022年5月2日 MK

突然ですがみなさん、「苔(コケ)」と言われて思い浮かぶものはなんでしょうか?
岩にくっついている植物・・・湿気のあるところに生えているもの・・・もしかしたら、なんだか雑草のような邪魔なものと感じている人もいるかもしれません。

苔というのは一言で言われますが、世界中で実に2万種もあり、日本には約1800種ものコケ植物が分布していると言われています。日本では古来より苔は身近な植物であり、万葉集の和歌にも用いられています。中でもみなさんにとっても身近に感じられるのは国歌「君が代」の歌詞ではないでしょうか。「さざれ石の巌(いわお)となりて 苔の生(む)すまで」という歌詞では、果てしなく長い時の流れを「苔」という言葉で表現しています。
また、英語圏では ”A rolling stone gathers no moss” という有名なことわざがあります。直訳すると「転がる石には苔(moss)も生えない」という意味ですが、これは「職業や住まいを転々と変える人は金が貯まらず、友人もできない」というネガティブな意味と、「常に活動的な人は新鮮である」というポジティブな意味があります。
このように、国歌やことわざで用いられるなど国内外で苔は昔から人々に身近な存在だったことが感じ取れます。
我が家では少し前から自分たちで作った苔テラリウムをリビングに置いて愛でています。現在育てているのは二代目なのですが(初代は3月の地震で割れてしまいました・・・)、毎日かわいくてしょうがありません。
自分たちで作ったというのもあると思いますが、毎日手軽に植物を眺めることができるのはリフレッシュにもなりますし、成長していく様を眺めて楽しむこともできます。また、その愛くるしさから様々な精神科デイケアで苔玉作りを行っているようです。

そんな苔ですが、人の体にも生えている場所があるのはご存じですか?
それは、舌の上です。鏡の前であっかんべーをすると、舌の上にのっている白いものがありますが、それを舌苔(ぜったい)といいます。
もちろん、植物の苔と同じものが生えているわけではありませんが、形状が似ていることからこのように呼ばれています。
舌苔は東洋医学では体の状態の指針として用いられており、白い苔がほんのり薄く乗っている状態が正常ですが、免疫力低下や胃腸が弱くなっているとその色や量が変化すると考えられています。
簡単にまとめると以下のようなものがあります。
・舌苔なし→胃腸の弱り
・白→冷え症
・黄→胃腸の弱り
・黒→体力が著しく低下している
他にも、舌の縁にぎざぎざの歯形がつきやすい方はむくみが強いと東洋医学では考えられています。手軽にチェックできますので、ぜひ歯磨きのついでに鏡の前であっかんべーをしてみてください。
また、舌苔は薄くて柔らかいものですので、毎日のメンテナンスとして歯ブラシで強くこすることはやめましょう。優しくさっとブラッシングする程度で大丈夫です。

日常の中で苔を眺めてリフレッシュしてみたり、舌苔を気にして体調管理をしてみたり・・・みなさんも苔活してみませんか?


 

写真 : 我が家の二代目苔テラリウム


参考文献
コケ植物-Wikipedia-
ウィズダム英和辞典 第3版
よくわかる中医学vol.15-中医学の診断方法「舌診」-https://chuigaku-cocokara.jp/magazine/2018/11/vol15_2.php