<第78回> 2024年1月12日 KY
新年あけましておめでとうございます。今年も東北大学病院生理検査センターのHPを宜しくお願い申し上げます。さて皆さんはどのような年末年始をお過ごしだったでしょうか。私は年末に日頃サボっておざなりになっている大掃除を自宅と実家の2軒分行い、年明けはお正月恒例の箱根駅伝をぬくぬくとした部屋の中でのんびり見ておりました。選手たちは走っているとはいえランニングにランパンで寒くないのかと毎年の事ながら気になっています。
箱根駅伝に限った事ではありませんが、駅伝やマラソンを観戦していると稀に低体温症となりふらふらと倒れ込むランナーを見る事があります。この低体温症とはどのような状態なのでしょうか。低体温症は、体温が35℃以下になる状態のことをいいます。35℃以下だったらいつもの自分の体温とあまり変わらないのではと思うかもしれませんが、表皮温度ではなく、体の深部の温度ですので、例えば直腸温度が35℃以下だとすでに低体温症になっているという事になります。深部温度が35℃を下回ると、「シバリング」と呼ばれる骨格筋の震えが見られます。骨格筋を収縮することで熱を生み出し、体温を上げようとするのです。冬の寒い日に体が震えている状態は、まさにこの軽度の低体温症になっている状態です。ランナーが低体温症になるのは体内での発熱に対して、外から冷やすスピードのほうが早い場合です。トップランナーは冬でも薄手のランニングシャツと短パンですので、肌の露出が多くなってしまいます。その状態でペースを上げると汗で肌が濡れてしまい、さらにそのスピードに乗っているので濡れた肌に冷たい風があたっている状態になります。そうなると、どんどん皮膚から体温が奪われていき、トップランナーは低体温症になってしまうというわけです。
低体温症下の症状の変化
それではトップランナー以外は低体温症にならないかというとそうでもないようです。同じような状態、すなわち体を濡れた状態で冷たい空気にさらされると低体温症になるリスクが高まります。汗をかかない、外気にさらされないような服装選びをする必要があります(案外むずかしいかもしれません)。また寒い日に忘れがちなのが水分補給です。意外かもしれませんが、脱水状態になると低体温症になりやすいと言われており、水分補給は大切です。本格的に震えが止まらない場合は体内から温める必要があるので、温かい飲み物をとりましょう。また体調が万全でないことが低体温症発症のリスクを高めるとも言われています。レジャー・スポーツを行う前には睡眠と栄養をしっかり取り、体調を整えて臨むようにしましょう。
当センター、検査部、放射線部合同で昨年11月、野球とソフトボールのレクリエーションを行いました。この日気温が低く、風も強くてとても寒い日でした。前半の野球の試合中、応援団は寒さにブルブルしていました。この時暖かい飲み物を準備してくれたMさんはまさに救世主で、ブルブルもおさまりました。
まだまだ寒さはこれからが本番です。屋外レジャーやスポーツなどの際は十分な準備と休養、栄養をしっかり取り楽しみましょう。
<引用・参考>
Medical DOC 「低体温症」の症状・対処法・放置するとどうなるかご存知ですか?
RUNNING STREET 365 冬のマラソンは低体温症に注意!走っても体が冷える理由
偶発性低体温症ガイドライン2018