第11回 臓器移植について家族と話し合ったことがありますか?

<第11回> 2018年2月15日 板橋泉

 臓器移植とは、重い病気や事故などにより機能が低下した臓器を他者の健康な臓器と取り替えて機能を回復させる医療です。臓器移植には、健康な家族からの生体移植と、亡くなられた方からの臓器提供による移植があります。後者の臓器提供元には、心停止された方と脳死の方があります。脳死とは、脳幹を含めた脳全体の機能が失われ、人工呼吸器などの助けがなければ、やがて心臓が止まってしまう状態です。脳幹の機能が残っており、自ら呼吸することができ、回復の可能性がある植物状態とは全く別のものです。日本には事故や病気で亡くなる方が毎年 約110万人おり、その1%弱が脳死による死亡です。

 心停止による死亡では腎臓、膵臓、眼球(角膜)を提供でき、脳死による死亡では心臓、肺、肝臓、腎臓、膵臓、小腸、眼球(角膜)を提供できます。脳死後の臓器提供の場合、1人の提供で最大11人の命を救うことができます。

 臓器提供に関する意思表示は、(1)脳死、心臓死どちらでも提供、(2)心臓死に限って提供、(3)提供しない、のいずれかを選択し、提供したくない臓器があれば、それを選択することもできます。また、皮膚、心臓弁、血管、骨など臓器以外の提供や親族への優先提供を記入することもできます。この意思は何度でも変更することができます。

 スマホやパソコンを用いたインターネットによる登録、健康保険証・運転免許証・マイナンバーカードの意思表示欄への記入、役所の窓口などに設置されている臓器提供意思カードへの記入により行うことができます。インターネットで手続きを行うと、自分の意思が印字されたカードが送られてきます。平成28年度の調査によると、全国で意思登録者数は136,696人(人口比0.11%)、宮城県内では2,143人(人口比0.09%)です。

 臓器提供について家族と話し合ったことのある人は約4人に1人(26.3%)です。自分の意思を尊重するためにも、一人一人が臓器移植について考え、家族と話し合い、「提供する」「提供しない」どちらかの意思を表示しておくことが大切ではないでしょうか。

 我が国では現在、第三者の善意による臓器の提供を待っている方が、約13,000人います。それに対して移植を受けられる方は、年間約300人でたった2%程度です。
 2016年の日本とアメリカの死後の臓器提供者数と移植数は、提供者数が日本96人に対し、アメリカ9,971人で、移植数が日本338件に対し、アメリカ27, 630件です。日米の人口比は2.5倍ですが、移植件数は80倍となっています。

 我が国では2010年改正臓器移植法の施行により、本人の意思がわからなくても(拒否の意思がない場合)、家族の承諾だけで臓器提供が可能となりました。これにより15歳未満の方からの脳死後の臓器提供も可能となりました。改正臓器移植法施行後、家族の承諾だけで行われた脳死後の臓器提供が73.6%を占めています。

 当院は、臓器提供施設(脳死判定実施施設)となっており、生理検査センター脳・神経機能部門のスタッフは、法的脳死判定における検査を担当しています。改正臓器移植法施行後から県内では、5件の法的脳死判定が施行され、臓器提供が行われています。


日本臓器移植ネットワーク https://www.jotnw.or.jp/