<第13回> 2018年4月2日 遠藤香織
生理検査センターは、診療科からの依頼で各種検査を行っています。1日数百人の来室があり、患者さんの状態は様々です。中には具合が悪くなって倒れてしまう方もいます。病院内で倒れた方を発見しても、医師をはじめ医療スタッフが大勢いるので、自分が特に何かをするということはないかもしれません。しかし、公共の場で、倒れている方に遭遇したらどうしますか?率先して声をかけることができますか?
このコラムでは、いざという時に役立つ救命処置の具体的な流れについてお伝えします。
①誰かが倒れるところを目撃したり、倒れているところを発見したら、自分自身の安全を確認したうえで、肩をたたきながら大声で呼びかけ反応があるかどうか確認します。
②倒れている人の反応がなければ「誰か来てください!」と大声で応援を求めて、119番通報を依頼し、近くにAEDがあれば持ってくるようにお願いします。
心肺蘇生の方法等を電話で指示してくれるので、電話をつないだまま指示に従ってください。
③10秒間、胸とお腹の動きを観察して呼吸を確認します。呼吸がないか普段通りでなければ心停止です。心停止直後には、しゃくりあげるような不規則な呼吸がみられることがあります。これは心停止のサインであり「呼吸なし」と考えて次に進みます。
呼吸があれば、気道の確保を行います。
④できるだけ早く、胸骨圧迫を開始します。胸骨圧迫のコツは“強く(胸が少なくても5cm沈むまで)、早く(少なくても100回/分のテンポで)、絶え間なく”です。
⑤AEDが到着したらすぐに電源を入れます。機種によっては、AEDのフタをあけると自動で電源が入るものもあります。
⑥倒れている人の衣服を取り除き胸をはだけます。AEDのケースに入っている電極パッドの1枚を胸の右上に、もう1枚を胸の左下の素肌に直接貼り付けます。電極パッドを貼る間もできるだけ胸骨圧迫を続けます。
⑦「離れてください。心電図の解析中です」との音声メッセージとともに、AEDが自動的に解析を始めます。電気ショックが必要な場合は「ショックが必要です」と音声でその必要性を教えてくれます。周囲の人が倒れている人に触れていないことを確認して、ショックボタンを押します。
⑧電気ショックの後は直ちに胸骨圧迫を再開します。AEDの指示に従い、約2分おきに心肺蘇生とAEDの手順を繰り返します。(AEDのパッドは救急隊が到着するまで貼ったままにしておいて下さい。またAEDの電源も切らないで下さい。)
※AEDが「電気ショックは不要です」と指示してきた時、倒れている人に反応がなかったら、必ず胸骨圧迫を行って下さい。「電気ショックは不要です」=「心臓が動いている!回復した!」ではありません。
以上が簡単な救命処置の流れになります。極めてまれではありますが、結核・肺炎等の感染例が報告されているため、人工呼吸の手順は省いてあります。胸骨圧迫をしっかり継続するだけでも構いません。また、もし救命処置がうまくできなかったとしても、責任を問われることはありません。救命処置は、基本的に義務のない第三者が他人に対して、傷病者の身体に対する「急迫の危害」を逃れさせるために実施するものであり、悪意または重過失がなければ心肺蘇生の実施者が救急患者から責任を問われることはないとされています。大切なのは、見て見ぬふりをせず、勇気をもって声をかけることです。
《参考URL》日本救急医学会 市民のための心肺蘇生(アクセス日:2018年3月23日)
http://aed.jaam.jp/index.html
