第26回 新生活はいかがですか?

<第26回> 2019年5月8日 N.S

 平成31年4月1日、新しい元号「令和」が発表され、5月1日新しい時代が幕を開けました。令和は元号として248個目。「一人ひとりが、花を大きく咲かせることができる日本人でありたい」との願いを込めて命名されたことは周知の事実ですね。元号の持つ意味が、国民一人一人の心に強く訴えたものは、「令和」が初めてではないでしょうか。

 さて、新しいと言えば、4月に新しい環境になった方も多いと思います。そして今の時期に心配になるのは、そう、5月病です。4月は新しい環境に飛び込むことが多く、例えば入学、就職、異動など生活環境の変化が起こる時期です。悪いことだけではなく良い出来事にもストレスを感じ、そのストレスに適応できずに生じてしまうようです。
 4月はやる気を出し、張り切っている状態ですが、目標や理想と現実とのギャップに気付き、張り切っていた糸がぷつっと切れるようにやる気が無くなってしまうことがあります。その状態で大型連休に突入し、そのまま学校や会社に行きたくなくなる・・・。 5月病とは、そのような新しい環境に適応できないことによって起きる精神的な症状の呼称です。では具体的にはどのようなものなのでしょうか。

 5月病は、医学的に「うつ病」や「適応障害」と診断されます。「うつ病」は気分に関するものとして、「適応障害」はストレスを原因とするものとして「精神障害」の一つに分類されます。

 「うつ病」は脳のエネルギーが欠乏した状態といわれ、気分や様々な意欲の低下といった心理的症状が続くだけでなく、身体的な自覚症状(頭痛、胃痛、動悸、息苦しさなど)を伴う場合も多くあります。医療機関で使われる診断基準には以下の症状が記載されています。

①憂鬱な気分や悲しい気持ち
②毎日または一日中、興味や関心の減退
③体重の増減
④不眠、過眠
⑤焦って落ち着かない、思考や行動にブレーキがかかる
⑥思考や集中力の減退、決断困難
⑦疲労感、気力の減退
⑧自分に価値が無いように感じる、過剰な罪悪感
⑨死について繰り返し考えるようになる

 これらのうち5つ以上(①または②のどちらかを含む)の症状が2週間以上続き、本人が著しい苦痛を感じているか、仕事や生活に支障をきたしている場合「うつ病」と診断されるようです。

 「適応障害」は、はっきりと確認できるストレスが原因です。それらのストレスに適応できず、著しい苦痛や機能障害により健康的な社会生活ができない状態です。そのため、そのストレス因子が除去されれば症状が消失するという特徴を持っています。精神症状として、不安、抑うつ、焦燥感、敏感、混乱などがあります。身体症状としては、倦怠感、頭痛、腹痛、行動障害(遅刻や欠勤)、不眠、法律違反などがあります。

 それでは、あなたの周りに何となく「あれ?」と思い当たる方はいませんか?新人さんへあなたは何と声を掛けていますか?「そろそろ慣れた?」「ちゃんとできてる?」「頑張ってる?」「早く覚えてね!」
 環境に馴染めていないと感じている人にこのような言葉はとてもきつい言葉です。その人が、頑張っていることはちゃんと見ているよ、自分のペースで大丈夫だよ、と認める言葉または前向きな言葉をかけてあげるだけで変わってくるのではないでしょうか。ただ、そのような状況の人にどう接していいか分からないから声を掛けないというのは間違いとのことです。つらい気持ちに寄り添って理解を示すことが大切だそうです。

 厚生労働省からのインターネットサイトに、「こころの耳」という働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトがあります。「5分でできる職場のストレスセルフチェック」などのチェックツールやeラーニングで学ぶことができます。相談窓口や、各種救済制度などについて知ることや調べることもできます。気になる方は、一度閲覧されてみてはいかがでしょうか?


参考:厚生労働省「こころの耳」働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
http://kokoro.mhlw.go.jp/