第63回 顎の疲れはありませんか

<第63回> 2022年10月14日 MS

みなさんは朝起きたときに顎が疲れていたり、日中ふとしたときに強く噛みしめていたりすることはありませんか。そのような方はもしかしたら睡眠時に過度に歯ぎしりをしているかもしれません。

歯ぎしりと聞くとぎりぎりと音を立てるイメージがあるのではないでしょうか。実は歯ぎしりにはいくつかの種類があり、中には音を立てないものもあります。主な種類としては1) グラインディング: 上下の歯を強くこすり合わせる動作、2) クレンチング: 上下の歯を静的に強く噛み合わせる動作、3) タッピング: 上下の歯を動的にカチカチと噛み合わせる動作が挙げられます。睡眠中に無意識に行っているものなので自分では気づきにくいですが、グラインディングとタッピングは周りの人から指摘されることで分かるかもしれません。一方でクレンチングは音を立てないため、特に気づかれにくいでしょう。

健康な方でも睡眠時には多少の歯ぎしりをしていますし、歯ぎしりの何が問題なのかと思われるかもしれません。しかし過度の歯ぎしりは、歯のすり減り、歯根のヒビや割れ、入れ歯・差し歯や詰め物の破損、歯周病の重篤化、顎関節症など多くの弊害があります。

歯ぎしりは薬剤、アルコール、ストレス、睡眠呼吸障害などがその原因となっていることもあれば、原因不明の場合もあります。何かしらの原因がある場合には、治療の際まず原因への対応を行います。そのうえで改善しない場合、原因が明らかでない場合には咬合療法、薬物療法などが行われます。中でも一般的なものは咬合療法の1つであるスプリント療法で、これは睡眠時に専用のマウスピースを使用する治療法です。長期的に歯ぎしりそのものを止められるわけではありませんが、歯にかかる力の分散と歯・顎関節の保護を行うことができます。

歯の健康というとむし歯や歯周病予防が一般的ではありますが、ぜひ歯ぎしりについても気にしてみてください。


〈参考・引用〉
厚生労働省 e-ヘルスネット
-https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/teeth/yh-028.html
葭澤秀一郎. 睡眠時ブラキシズムの診断法と管理法. 睡眠口腔医学. 2020, 6 (2), p. 123-128