第17回 肩の痛み、「五十肩」とは?

<第17回> 2018年8月8日 N.K

 中高年で悩まされる人が多いとされている「五十肩」、別名「frozen shoulder(凍結肩)」は、加齢による肩関節周囲組織の変化を基盤として、特別な誘因なく痛みや運動障害を認める疾患です。その名は昔から知られており、江戸時代の書物に「人五十歳ばかりの時、手腕、関節痛むことあり(中略)、これを五十腕とも五十肩ともいう」と記載があるほどです。

 凍結肩の病期は、急性期、慢性期、回復期に分けられています。
 急性期では、着替えをするときに痛い、髪を洗うときに痛い、といったように動作をするときの痛みの他、夜間に痛みで目を覚ましてしまう夜間痛、安静時痛があります。 慢性期では、痛みが軽減する一方で、可動域制限が進行します。つまり、“frozen shoulder”という名の通り、肩を動かせる範囲が限られてしまい、思うように動かせなくなっていきます。

 凍結肩は自然に治ることもありますが、回復したあと数年後に、何らかの痛みや可動域制限が残ることが多いとされています。そのため自然治癒力に任せるだけでなく、痛みと可動域制限を改善するための積極的な治療およびリハビリテーションが勧められます。
 具体的な治療としては、急性期の痛みに対して経口薬やテープを使用し、あまりに痛みが強い場合には肩峰下滑液包内や肩関節腔内への注射を行うこともあります。慢性期の可動域制限に対しては、温熱パックやストレッチングなどのリハビリテーションが行われますが、過剰な刺激は炎症を悪化させてしまい、拘縮を助長してしまう恐れがあるため、痛みを誘発させない範囲で行うことが重要とされています。

 また、凍結肩と症状が似ていることから、腱板断裂が見逃されてしまう場合が多くあります。しかし、痛みの出現の仕方は疾患によって異なります。凍結肩では「これ以上は腕が上がらない」という動きの最終可動域で痛みが生じる一方で、腱板断裂では「腕を上げる途中が痛い」という動作の途中で痛みが生じることが特徴です。実は腱板断裂が原因であった痛みを、凍結肩と思い放置してしまうと断裂が進行して広がり、手術を行っても治りが悪くなってしまうため、早期発見が重要です。

 凍結肩や腱板断裂があると、痛みで悩まされるほか、筋力が弱くなり日常生活動作に支障を感じるようになります。また、夜間痛があると寝不足にもなってしまいます。
 何気ない肩の痛みや違和感があれば、症状を放置せずに病院で診察を受けることが、日々の生活を快適におくるための第一歩に繋がります。

 

 




[参考文献]
日本整形外科学会 整形外科シリーズ
きょうの健康,日本放送出版協会,東京,2008