第44回 超音波(エコー)検査のすすめ

<第44回> 2021年3月9日 船水 康陽

人間が耳で聴くことができる音を可聴音(audible sound)といい、その周波数はおよそ20~20,000Hzですが、その可聴周波数よりもさらに周波数の高い(20,000Hzを超える)音を超音波(ultrasound)と言います。したがって超音波とは「人間の耳には聞こえない音」との理解が一般的であり、実際には「人間が聞くことを目的としない音」つまり「何かを計測するための手段として使用する音」として定義されています。
その歴史ですが、超音波に関する研究は、1912年にイギリスの豪華客船タイタニック号がその初航海で氷山に衝突した後、海中に超音波を送信して氷山の反響を探査するソナーの研究から始まったと言われています。
第一次世界大戦中の1917年にはイギリスで潜水艦探知用のソナーの開発に成功し、第二次世界大戦後は魚群探知機としても使用されるようになりました。1960年に我が国で世界初の超音波診断装置が製品化され、広く臨床利用が行われるようになりました。

Photo:シネマトゥデイより引用

さて、超音波検査はX線、CT、MRI、血管造影など画像診断の一種ですが、その特徴は非侵襲的(放射線被曝や痛みがない)検査法であるため繰り返し検査可能であり、また、今、動いている臓器をそのままリアルタイムに観察し評価ができ、更に検査コストが安価であるなど安全性が高く患者さんに優しい検査法です。実際の臨床では、腹部、心臓、乳腺、甲状腺、頸動脈、下肢静脈、下肢動脈、腎動脈、腹部大動脈、関節などの領域において、スクリーニング、精密検査、経過観察、術前・術中・術後評価、治療効果判定など様々な目的で活用されています。特にスクリーニング検査では自覚症状が無くても病気が発見され早期診断、早期治療につながり生命予後に影響を与える場合もあります。
このように超音波検査は、肉体的、経済的な負担が少なく体の中の多くの情報を得ることができる検査法ですので、健康診断やかかりつけの病院等で年に1度は検査する事をお勧めいたします。