第47回 血管内皮機能検査

<第47回> 2021年6月10日 菊池 雪誠

最近、動脈硬化という言葉をよく聞くようになりました。動脈硬化とは、読んで字の如く血管が硬くなることです。動脈硬化によって、冠動脈疾患や脳血管障害が発生するリスクが高くなります。動脈硬化の評価には、動脈の硬さの指標CAVI(cardio ankle vascular index)、動脈の狭窄・閉塞を評価する指標ABI(ancle brachial pressure index)などの測定を行っています。
動脈硬化は、その前段階で血管内皮機能障害が起こるとされています。血管内皮は、血管の最も内層に位置する細胞層です。近年、血管内皮機能障害の評価方法として、血流依存性血管拡張反応(flow mediated dilation ; FMD)の有用性が認められ、東北大学病院生理検査センターでも実施しています。

FMDは一定時間血流をせき止め(駆血)、解除することにより流れの刺激を起こし、増加したずり応力にさらされた血管が弛緩する過程として起こります。血管内皮からは一酸化炭素(NO)などの血管拡張因子が放出され、血管の拡張を促します。安静時の血管径と拡張時の血管径をエコー装置で測定、比較し、血管の拡張率を%FMDとして表し、血管内皮機能を評価します。血管内皮機能が低下しているとNOの放出は少なくなり、FMD値は低下します。血管内皮を障害する病態、因子として、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満、運動不足、喫煙、閉経などがあります。FMD検査は、測定時間は午前中、空腹時に行うことが望ましいです。また、起床時より薬剤、喫煙やカフェイン、ビタミンCの摂取を避ける必要があり、飲水のみ可とされています。

FMD検査は、一定時間体を動かせなかったり、検査前の飲食に制限がかかったりなど、患者さんに負担のかかる検査です。そして、ABI/CAVI測定よりも時間がかかります。しかし、前述したとおり、血管内皮機能障害は動脈硬化の前段階で起こるため、冠動脈疾患等の発症予防や治療戦略の決定に活用できます。当センターでは、主に術前等に血管の状態を把握するためにFMD検査が実施されます。動脈硬化予防のために、今後さらに必要とされる検査になることでしょう。

参考文献
東條尚子、川良徳弘:最新 臨床検査学講座 生理機能検査学 医歯薬出版 73-75