第20回 放散痛について

<第20回> 2018年11月9日 佐々木聖子

 超音波検査を習い始めた当時、心窩部痛の患者さんの検査をすることが多く、胆石や膵炎など超音波で原因が捉えられる所見の有無を確認し、先生に所見をお返ししていました。

 ある時、心窩部痛でいらした患者さんの検査を頼まれ、肝臓・胆嚢・膵臓・胃など心窩部に位置する臓器を確認し、超音波では特記すべき所見がなくその旨を先生にお伝えすると、「アッペは?」と返されました。
 「???」なぜ心窩部とは遠い虫垂のことを聞かれるのかと疑問に思ったのを先生は感じとったのか、「放散痛というのがあるのだよ。虫垂炎の時は心窩部痛を訴えることもあるから虫垂も確認してね。もう一回超音波あててくれる?」と言われ、再度検査をしました。先生はもうご存じだったのだと思います。やはり虫垂は炎症所見を呈しており、すぐに手術になりました。

 原因となる部位とは離れた部位に痛みが生じる放散痛は、心筋梗塞で肩や歯の痛みを生じるなどでも聞かれます。
 超音波検査では痛みの原因を検査するためにその部位をよく観察しますが、病気の痛みも鑑みながら検査することの大切さを学びました。

 今後も患者さんの痛みのわかる検査技師を目指し日々勉強していきたいと思います。