第68回 目では見えない心臓の動きを見る

<第68回> 2023年3月8日 藤原 淳子

 心臓超音波検査では、白黒の画面でリアルタイムで動いている心臓を見ることが出来ます。診療ではこの動いている心臓を見て、〇〇の動きが低下している等の評価がなされます。この目で見る評価は非常に有効ですが、実際に動きが低下するほどダメージを受けた段階でないと判断出来ません。
 近年、「スペックルトラッキング法」という新たな方法を用いた目では追えない心臓の動き(壁の動きの変化:ストレイン)の評価が臨床応用されています。この方法では、目では動いて見えてもダメージを負っている部分をストレインの低下として捉える事が可能です。また疾患によってはダメージを負う領域に特徴があるため、ストレインの低下したパターンで判別することも可能です。
 スペックルトラッキング法は非常に優れた方法ではありますが、問題もあります。例えば超音波装置によって値が若干異なると知られていますし、超音波で心臓の見え方が良くないと正確な評価が困難になります。まだ手軽に出来る方法ではありませんが、近い将来には日常的に簡便に取り入れられ、多くの心疾患の患者様の早期治療に役立つ日が来ることを期待して止みません。