第69回 紫外線

<第69回> 2023年4月7日 M.R

私は桜が好きです。春に外を出歩くのも好きです。ただ私には、この時期に恐れているものがあります。紫外線です。最近まぶただけではなく、首にもシミを見つけました。1年のうち、春~初秋に紫外線量が多くなります。まさに今、どんどん増えているのです。
シミだけではなく、多くの研究により、紫外線を浴びすぎると人の健康に影響があることが分かってきました。

※サンバーン・・・紫外線にばく露した数時間後に現れる赤い日焼け(紅斑)
 サンタン・・・・赤い日焼けが消失した数日後に現れ、数週間から数ヵ月続く黒い日焼け(皮膚に色素沈着が起きたもの)=紫外線による被害を防ごうとする防衛反応

●紫外線の皮膚への影響
紫外線は波長によって、以下のA、B、Cの3つに分けられます。
・UV-A(A領域紫外線)…UV-Bほど有害ではないが、長時間浴びた場合の健康影響が懸念されている。
UV-B(B領域紫外線)…ほとんどは大気層(オゾンなど)で吸収されるが、一部は地表へ到達し、皮膚や眼に有害である。日焼けを起こしたり、皮膚がんの原因となる。
・UV-C(C領域紫外線)…大気層(オゾンなど)で吸収され、地表には到達しない。

皮膚には紫外線から身を守る仕組みが備わっています。最も強力な光線防御は色素細胞が作るメラニン色素です。メラニンは紫外線、可視光線、赤外線を吸収して、DNAへのダメージを 少なくします。人間の皮膚の色はさまざまです。それは黒褐色のメラニン色素のためで、メラニンが多いほど肌の色は黒くなり、紫外線に対して抵抗性があります。白人では紫外線を浴びても赤くなるだけで、あまり褐色になりません。日本人は赤くなるとその後数日して褐色になります。日本人でも色白で、日光にあたると赤くなりやすくて、黒くなりにくい人は紫外線対策が必要です。
肌の色が黒い方が紫外線に対して抵抗力があるからといって、むやみに日焼けすることは良くありません。地表にいる私たちが浴びる紫外線のうち、UV-Bは地球上に届いている量は少ない のですが、皮膚の細胞のDNAに傷をつけてしまいます。皮膚の細胞にはこのDNAの傷を修復する仕組みが備わっています。しかし、DNAの傷が大き過ぎたり、傷が度重なって修復能力を超えると直し間違いが起こり、誤った遺伝情報(突然変異) が生じることがあります。これが皮膚がんの原因になると考えられています。私たちは子供のうちに大量の紫外線を浴びていると考えられていますが、その影響は何十年もたってから現れてきます。長年日光を浴び続けていると、皮膚のシミやしわ、ときには良性、悪性の腫瘍が現れてきます。お年寄りの顔や手の甲に見られるこれらの変化は、一般に加齢による老化と思われがちですが、実は生理的な加齢に加えて、紫外線による慢性傷害によって生じる光老化の結果でもあります。光老化は加齢による自然の老化とは異なり、適切な紫外線防御対策により防ぐことができるものです。子供のうちから紫外線を浴びすぎないよう、帽子、衣類、日焼け止めなどによる紫外線防御を心掛けることが大切です。

紫外線に関連してできる皮膚の腫瘍には良性のもの(脂漏性角化症)と悪性のもの(皮膚がん)があります。UV-Bのばく露と関連することが知られている皮膚がんとしては、前がん症である日光角化症と有棘細胞がんがあります。日光角化症の段階で治療すれば生命に関わることはありませんが、治療しないとより悪性化し、転移すれば生命に関わります。

●紫外線の眼への影響
紫外線は、結膜(白目)、角膜(黒目)、水晶体で吸収されます。紫外線ばく露による眼への影響については、急性の紫外線角膜炎、慢性の結膜疾患では翼状片、水晶体疾患では白内障が知られています。

●紫外線とビタミンD
私たちの体にとって、紫外線とビタミンDは切っても切れない関係にあります。ビタミンDの主な働きは、腸からのカルシウムの吸収を2-5倍程度に増加させることです。ビタミンDが不足すると、食事でカルシウムを摂っていても十分吸収されず、カルシウム不足におちいります。血液中のカルシウム濃度が低下すると、けいれんなどの大きな症状が起こるため、骨からカルシウムを溶かしだして供給するようになります。その結果、骨の強度が低下して曲がりやすくなり、くる病(主に成長期の子ども)や骨軟化症(成人)といった病気を起こすようになります。
ビタミンDの観点からは短時間の日光浴は必要ですが、一方で紫外線には発がん作用などの好ましくない作用があるのも周知の事実です。私たちは、この両方を上手に秤にかける必要があります。ビタミンD産生に必要な日光浴の時間は、地域や季節、自国、天候、服装、皮膚色(スキンタイプ)など多くの要因で左右されます。今回引用した参考資料に例示されています。気になる方は、見てみてください。

●紫外線による影響を防ぐために
日焼けしてからのお手入れでは遅いです!!紫外線を浴びすぎないために、以下のような対策を行いましょう。
<対策>  
①紫外線の強い時間帯を避ける。  
②日陰を利用する。  
③日傘を使う、帽子をかぶる。  
④衣服で覆う。  
⑤サングラスをかける。  
⑥日焼け止めを上手に使う。

正しい対策を行って、紫外線とうまく付き合っていきたいですね。


参考:紫外線環境保健マニュアル2020/環境省