第9回 「てんかん」を知っていますか?

<第9回> 2017年12月15日 R.I

「てんかん」という病気を知っていますか?
てんかんを持つ人は、約100人に1人と言われています。
学校だったら学年や学校に数人は存在していても不思議ではありません。
あなたの身近にも、病気に悩んでいる患者さんがいるかもしれません。
ただ、気づかない、知らないだけなのです。

ニュースで見聞きするてんかんのイメージは、「意識がなくなる」「けいれんする」が圧倒的だと思われます。しかし、てんかんの症状はそれだけではありません。
例えば「光が見えるだけ」や「手足がピクンとするだけ」という患者さんもいます。
大脳の神経細胞の過剰な興奮が、脳のどこで起きているのかによって、実に様々な症状が現れます。ですから、症状も対応も個々のケースで考えなくてはなりません。
インターネット上にある「○○てんかん」の情報が、その患者さんにとって必ずしも全て当てはまるとは限らないのがてんかん医療の難しいところでもあります。
インターネットは便利ですが、一方で患者さん自身に合っていない情報がある事も忘れないで欲しいと思います。

では、実際にてんかん発作に遭遇した時はどうしたらいいでしょうか?
基本的には、周囲の危ない物をよけて、回復まで見守る対応で大丈夫です。
もし可能なら、症状の観察も意識してみてください。診察の時に役に立ちます。
見落とされがちですが、発作の始まりの部分の情報は、とりわけ重要です。

<倒れない発作の場合>
話かけてみて、意識がはっきりしているかぼんやりしているか確認してみてください。
症状に左右差はないでしょうか?
<倒れる発作の場合>
はじめは意識があったのに、引き続いて倒れてしまう事もあります。
けいれんを初めて見たら誰だってびっくりしてしまいますね。ですが、まず落ち着く事が大切です。
てんかんの発作なら、たいていは1~2分で自然に止まります。
間違っても、口に何かを挟んだり、押さえつけたりはしないでください。かえって危険です。

もし、けいれんが3分以上続くまたは落ち着く前に次の発作が何度も立て続けに起きる、明らかにいつもと様子が違う等の場合は、救急車を呼びましょう。


推薦図書
・知っておきたい「てんかんの発作」(DVD付属)著者:久保田有一 アーク出版
・てんかん発作 こうすればだいじょうぶ 改訂第2版(発作の実演・介助法DVD付)
 著者:川崎 淳 公益社団法人 日本てんかん協会


そして、身近な人の発作に遭遇したならば「次にまた発作がおきたら、何かサポートできる事はある?」と声をかけてみてください。
それは患者さんにとって、きっと心強い励ましとサポートになると思います。
お互いに病気に対する理解と歩み寄りが、「てんかん発作」と上手にお付き合いしていくことにつながるはずです。


ここからは、患者さんとご家族の方へのお話になります。
病気の事を、誰にどこまで知ってもらうか、という悩みを抱えている方は多いと思います。
これはとても難しく、デリケートな問題です。
もし伝える場合は、大切なポイントがいくつかあります。
発作症状は十人十色です。自分では発作の状態が分からない方もいますが、客観的な情報と、自分にしか分からない発作症状の両方を整理し、自身の発作を正しく知る事から始めましょう。
漠然とした情報のままでは、相手に過剰な不安を抱かせます。
伝える内容や言い方を、身近な人や主治医などに確認してもらい、どう感じたかの感想を聞いてみるのもいいかもしれません。
発作の症状と対応の仕方の両方をセットにして、誤解の無いように、できる限り具体的に伝えることが重要です。
上記の発作時対応も参考に、ご自身に必要な部分をピックアップしてみてください。


推薦図書
・「てんかん」のことがよくわかる本 監修:中里信和 講談社

この本の中では、患者さんが子供の場合、大人の場合、学校、職場、友人、恋人など伝えたい対象別に「伝え方のヒント」も書かれています。
正しい診断と正しい服薬ができれば、6割の患者さんの発作はコントロールできると言われています。
「てんかん」は決して稀な病気ではありません。
もし、今一人で悩んでいる方がいるなら、こちらへアクセスしてみてください。

【公益社団法人 日本てんかん協会】 
http://www.jea-net.jp/
HPの中で、協会が紹介している関連書籍のページはこちらhttp://www.jea-net.jp/publish/book01.html

【てんかん診療ネットワーク】
こちらはてんかんの地域診療連携の推進を目的として日本医師会と日本てんかん学会の支援下に厚労省研究班により運営されています。
https://www.ecn-japan.com/general/

「知らない・わからない」はおそれにつながります。「てんかん」の正しい知識が広まって、誤解や偏見のない病気との付き合い方が当たり前になっていって欲しいと願っています。